あの時別の選択肢を選んでいたら…。PC購入後にそんな if を抱えることがよくある。大きな人生の選択はやりなおせなくても、別のPCを選んだ日常はどんなものだったのかという程度の小さな選択ならやりなおせる。それを今回は体験してみたい。
1年ほど前にメインマシンを刷新した。Razer Blade Stealth 13 という機種である。NVIDIA GTX 1650 Tiを積んだハイスペックマシン。解像度はFull HD。つまり1920 x 1080ピクセルであるが、リフレッシュレートは120Hz。購入時に4K解像度である3840 × 2160ピクセルのディスプレイも選べたが、3Dもやりたいしということで、高解像度モデルではなく、高リフレッシュレートモデルを選んだのだった。
Razer Blade Stealth 13 は処理能力面では文句がないものの、別の選択もあったのではとの思いが頭をよぎることが増えた。性能は高いのだが、ちょっとした作業のときもハイパフォーマンスで動作してしまうため、バッテリーの持ちも非常に悪いのである。例えば、グラフィックボード不搭載の機種を買って、必要な時にeGPUに繋げた方が良いのではないか…。
ちなみに、仕事で使っているのがWindowsであるため、Macを使うことがこの2年ほどでかなり減ってしまった。ということで、Macのメイン機は、2017年に購入したMacBook 12インチモデルのままである。
DELLのXPS13は、コンパクトな筐体デザインと高解像度なモニタ搭載という点から気になっていた機種の一つだ。
そんなことを facebook でつぶやいていたら、知人にデル アンバサダープログラムがあることを教えてもらった。そんな経緯でXPS13 2-in-1をお借りすることができたので1か月ほど使ってみようと思う。果たしてあの時の選択は合っていたのだろうか。
XPS13 2-in-1を開発向けにセットアップ
XPS13 2-in-1は、4Kを超える3840 × 2400ピクセル搭載のモデルがあり、今回はそれをお借りしている。色はプラチナシルバー&ブラックだ。尚、お借りしているモデルはXPS 13 2-in-1 7390であり、最新版のモデルではない点に注意されたい。
筐体のサイズは、公式サイトを見ると、高さ:7~13mm、幅:296mm、奥行き:207mmとなっている。
このサイズは、ちょうどMacBook 12インチとサイズ感的には近い。
最小重量は、1.33kgということであり、MacBook 12インチより重いばかりか、Razer Blade Stealthの1.41kgにも匹敵する重量であるため、最近のPCとしてはそこまで軽くはない。ただし、解像度でいえば、MacBook 12インチでも2304 × 1440ピクセルであるため、この解像度搭載でこの重量はありだと個人的には感じる。
とりあえず、キーボードやトラックパッドの感じを味わっていくため、最低限のWebフロントエンドの開発環境を整えてみようと思う。
まずは、開発時に愛用しているブラウザChromeをインストールし、その後、Visual Studio Codeをインストールする。Visual Studio Codeは、豊富なプラグインを持つMicrosoft製のエディタだ。最近はこのエディタで、記事執筆からWebフロントエンドのコーディングまでこなしている。
ここまでは、上記URLからダウンロードした上で、通常のアプリケーションのインストール手順で進んでいく。続いて、WSLをインストールする。WSLというのは、Windows Subsystem for Linuxの略で、Windows 10環境上で仮想環境やOSのデュアルブート環境を用意しなくてもLinuxアプリケーションを実行できる環境をWindows PC上に構築できる。わざわざLinux OSなんて用意しなくてもと思う方もいるかもしれないが、Windows環境だけでははかどらない開発というのもあるのだ。WSLのインストールは、以下のドキュメントに詳しく掲載されている。
上記公式ドキュメントに沿って進めても良いが、下記記事にあるようにGUIベースで進めていく方法もある。今回はこちらでインストールを進めた。Linux OSは Ubuntuを選択している。まあそのあたりの細かい話は、XPS13と関係がない上に、話し出すとキリがないので割愛させていただく。
そんなこんなで、Windows 10環境上で、Microsoftの公式Linux環境であるWSLを使って、コーディング、ブラウザでの確認をする環境があっという間に整った。最近のWindowsをとりまく環境は、Webで何かを作りたいという場合にいたれりつくせりな状態にあると思う。
高解像度下では、Full HDで確認しながら開発が可能
XPS 13 2-in-1は、3840 × 2400ピクセルのモニタを選択することができる。これは、Webフロントエンド開発でも大きな強みとなる。例えば、Full HDで表示するブラウザを右側に配置しつつ、左側のウインドウでは、開発を進められる。
これは、[設定]から[ディスプレイの詳細設定]を選ぶことで変えられる表示倍率を100%にすることで実現可能だ。通常の現実的な解像度ではないが、デバッグ時には使えそうである。筆者的には200%の表示が現実的な解像度だと感じた。
キーボードとトラックパッドの使い心地
使ってみて改めて思ったのだが、XPS 13 2-in-1のおすすめポイントはキーボード押し心地やトラックパッドのタッチ感なのかもしれない。DELLのPCに触るのはこれが初めてではなく、以前触った時も独特なカチッとしたキータッチが印象に残っていた。XPS 13 2-in-1もDELLらしいキータッチを味わうことができる。
最近のノートパソコンのキーボードの一つの方向性として、Razer Blade Stealth 13やMacBook 12インチモデルにみられるような極薄のペチペチキーボードというのがある。この手のキーボードは個人的に相性がよくなく、結局外部キーボードを使うことになってしまったというのが現状だ。XPS13 2-in-1のキーボードもペチペチ系の系譜ではあるが適度なフィードバックが心地よい。
家で仕事をするときは、基本外部キーボードを使うものの、外出時に持ち運ぶと大袈裟なことになるのでなるべく本体のキーボードのみで済ませたい。そうなると、本体のキーボードにもこだわるようになってしまうのだ。ちなみにRazer Blade Stealth 13のときは、近所で触れる店がなく、スペック重視で購入してしまった経緯があり、後悔の一つがキーボードだった。
XPS 13 2-in-1は、特にトラックパッドが素晴らしいと思う。適度なアタック感があり、押すのがくせになりそうだ。ちょっと難点としてはクリック時の音が大きいので、電車内ではクリックせずタップで使うかもしれない。
テントモードを使う
キーボード一体型2-in-1 ノートPCでテントモードなるものが登場してからずいぶん時間が経つと思うが、実はテントモードが使えるノートPCを購入したことが一度もない。このテントモードの使い勝手もXPS 13 2-in-1を借りた時に試してみたいことだった。
クラムシェル型のPCの不満点の一つに、HHKB (Happy Hacking Keyboard) のような外付けキーボードを使う時はキーボードの上に置くことになるため、台を敷くなど工夫が必要という点があった。キーボードを奥側に配置可能なテントモードを導入することで、この手間が減るのではという期待が今回あった。
実際、導入してみるとなるほどモニタ周りがすっきりして使いやすい。ただ、やってみてわかったのだが、見た目としては異常な感じに見えるので、カフェとかでやるのはあまりスマートではないなと思うに至った。居間とかで使うにはこれだとすっきりして良い感じがする。
まだ XPS 13 2-in-1の貸与期間が1ヶ月ほどあるので、いろいろいじってみようと思う。
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原 一浩
カンソクインダストリーズ代表 / グレーティブ合同会社代表
1998年に独立し、同年、ウェブデザイン専門のメールメディア DesignWedgeの発行を開始。Webデザイン業の傍ら、海外のWebデザインに関する情報発信を行う。
雑誌への寄稿多数。主な著書に『はじめてのフロントエンド開発』『プロセスオブウェブデザイン』、『Play framework徹底入門』、『ウェブデザインコーディネートカタログ』など。自社製のWebデザインのクロール&キャプチャシステムvaqumをベースに、様々なリサーチを行っている。Web 検定プロジェクトメンバー。