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良い強制のためのワークデザイン

2019-05-04

会社員時代 (を語れるほど長く会社員ではいませんでしたが)、早く自由になりたいと思っていました。会社の経営者は会社員よりも自由がありますが、それでもフリーの自由さに比べると精神的には制約が多い気がします。

今にして思えば、会社員の頃はいかに自由を獲得するかという点に力点を置いているふしがありました。例えば、なるべく早く仕事を終わらせて時間を作るとか、早く帰宅して自分の時間を確保するとかです。でも、実際はうまくいかなかった部分があり、それについては自由になることが目標ではないはずなのに何か失敗したような気がしていたものです。

フリーランスに戻ると、自由であることが普通になる

フリーランスに戻ってからは、いかにフリーランスが自由であるかというのを実感しています。会社員時代は、自由というのが獲得するものであったのに対し、フリーランスは、自由であることが前提なのです。その分、何もしなければそのまま時間は流れていき、いろいろと行き詰まるというリスクは抱えているのですが。

さて、フリーランスに戻ると莫大な自由を獲得するわけですが、精神的には別の志向が発生します。いかにして集中するか、いかにして習慣化するか、どうやって強制される空間を作り出すかなどです。

強制されるということは悪いことばかりではありません。確かによくない強制というものも存在しますが、強制はうまく使えば、それだけに意識を向ける時間を作ることが出来、限られた時間内で追い詰められることで潜在的なパワーを発揮することが出来ます。

ただ、強制されたいと思っている状態で自発的に自分を強制するというのはなかなか難しいもので、だからこそ、修行僧は自分を律するということに苦心しているのだろうと推測します。

いい強制をデザインし、生活に組み込む

強制をいかに生み出すかというのは、いくつかトライしてきていて、勉強会に向けて強制的にスライドをまとめるというのも外部からの強制力が働くことで、自分自身を伸ばす効果があると思います。

最近いい強制につながるという部分で注目しているのは、習慣化です。習慣化という言葉は古今東西いろいろな人が大事と言ってきたことなので、今更語るべきことはないのですが、確実に自分に実践をするとなるとまったくもって難しいのです。

例えば「A を毎日やる」と宣言して取り組むというのも一つの方法だと思います。更に、毎日のリズムに組み込むというのもより効果的です。自分でやってみた結果、効果が出た「サンプル数 1」の経験では「毎日 A をする」という単独の予定は弱くて、「朝ごはんの前には、毎日 A をする」という他の予定と組み合わせると少し効果が高い気がします。

それと、習慣化について思う点として、目的に沿って進むのは習慣化された後にするというのが大事かもしれないと思っています。例えば手段を目的化するというのはよくないことと言われがちですが、習慣化する際は (習慣になるのは 3 週間かかると言われているので、3 週間の間は) 目的は置いておいて、手段に集中するということが良い効果を生んでいます。

その際に、手段が自分にとって楽しいものであれば、なおさら良いです。つまり、手段が楽しくなることを心がけると、毎日行うことも苦になりにくくなるというわけです。目的地に進むのは習慣化してからでも遅くないでしょう。

いい強制ができているのか定かではないですが、ゴールデンウィーク中もこのサイトで毎日書くことができています。そして、その分だけきっと前に進んでいるのだと思います。


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    原 一浩 の顔写真

    (はら) 一浩(かずひろ)

    カンソクインダストリーズ代表 / グレーティブ合同会社代表

    1998年に独立し、同年、ウェブデザイン専門のメールメディア DesignWedgeの発行を開始。Webデザイン業の傍ら、海外のWebデザインに関する情報発信を行う。
    雑誌への寄稿多数。主な著書に『はじめてのフロントエンド開発』『プロセスオブウェブデザイン』、『Play framework徹底入門』、『ウェブデザインコーディネートカタログ』など。自社製のWebデザインのクロール&キャプチャシステムvaqumをベースに、様々なリサーチを行っている。Web 検定プロジェクトメンバー。日本バーチャルリアリティ学会正会員。

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