ちょっと前に、Trello のデザインシステムのページのイラストレーションの箇所 Nachos | Trello を見ていたのですが、このページは他のガイドラインと比べると少し異質だなあと感じました。
この異質感について、つらつらと考えたので書いてみます。結論は特にありません。
フォーム周り、配色、タイポグラフィなどは、もしデザインが変更になった場合に、一括置き換えが可能なタイプの定義と言えます。しかし、イラストについてはなかなかそうもいきません。というのもイラストレーションは一つ一つ作っていくタイプの要素で、なおかつ共通化がしにくいものだからです。
大幅にデザインをリニューアルすることになったら、全ての書き換えが必要で、それにはコストがかかります。 AI にイラストのスペックを渡すと、同一テイストのイラストに変換してくれるのであればいいのですが、そんな時代はもう少し先でしょう。
一つ一つがユニークなものであるということは、スペック化がしにくいものと言えます。そのため、イラストのガイドラインとしては、オブジェクトの処理やグラデーションの使い方、パレットなど、それらが決まっていたからといって同様のイラストを書けるわけではなさそうな粒度に止まっています。また、イラストのページだけコンテンツが「Coming Soon」となっている点からも、イラストのスペックを決めることの難しさを物語っている気がします。
ガイドラインに適合しているかどうかは、他のガイドラインであればディレクターが確認し、すぐに正解へ導いていけそうですが、自分がイラストレーターにこの粒度でガイドラインを渡した場合、何往復かやりとりをしないとガイドライン通りのイラストにならなそうな気配がします。
いくつか気になっている点を箇条書きで書いてみます。
- イラストレーターにも個性があり、その個性も暗黙的に決まっている側面が強いため、暗黙的な部分を含むガイドラインであると、希望した通りのアウトプットが得られない可能性があるのではないだろうか
- 例えば、アニメのようにキャラクターが決まっている場合は、キャラクターデザインを厳格にしていきやすいのではないだろうか
- 3D キャラクターであれば、他の人が同質のアウトプットを出しやすい (ツールを統一すれば、なお良い) のではないだろうか
僕が感じているのは、イラストレーションのスペックという点ではまだまだ追求していない分野があるのではということです。きっとイラストを書くという仕事と、スペックのあるイラストセットを設計する人というのは職能的に違うのでしょう。
イラストレーションの雰囲気を決める人と、大量生産をする人とをはっきりと分けている既存の分野として、アニメーションの世界があります。
例えば、以下の 100+ Character Model Sheets From Animation History などで見られるように、キャラクターを絞り、そのモデルシートをきっちりと決めることで、精度の高いイラストレーションを生み出すヒントがあるかもしれないと考えたりしました。
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原 一浩
カンソクインダストリーズ代表 / グレーティブ合同会社代表
1998年に独立し、同年、ウェブデザイン専門のメールメディア DesignWedgeの発行を開始。Webデザイン業の傍ら、海外のWebデザインに関する情報発信を行う。
雑誌への寄稿多数。主な著書に『はじめてのフロントエンド開発』『プロセスオブウェブデザイン』、『Play framework徹底入門』、『ウェブデザインコーディネートカタログ』など。自社製のWebデザインのクロール&キャプチャシステムvaqumをベースに、様々なリサーチを行っている。Web 検定プロジェクトメンバー。